解決事例27
外貌醜状(アゴに線状痕)9級16号・開口障害・そしゃく障害12級の併合8級の事案で、外貌醜状による逸失利益を一切認めない保険会社に対し、交通事故紛争処理センターの裁定で逸失利益を認めさせ、保険会社提示額900万円を1800万円に増額させた事例
依頼者情報
28歳女性 豊中市在住
症状名
右下顎部裂創
事故状況
赤信号停車中の加害車両の左側を依頼者が自転車で走行・通過しようとしたところ、加害車両の助手席ドアが開き、ドアに依頼者が激突した。
相談に至る経緯
後遺障害等級14級が認められた依頼者は、当初ご自身で保険会社担当者と交渉をしておられた。しかし、保険会社担当者は、就労に影響を及ぼすほどの怪我でないとして休業損害を否認し、通院交通費についても全額否認してきた。そのうえで、総額約136万円の支払で示談するように求めてきた。依頼者は、休業損害及び通院交通費が全く認められないことに納得できず、当事務所に相談に来られた。
結果
保険会社の示談案は、慰謝料460万円・逸失利益350万円(労働能力喪失率14%で10年間)・その他合計900万円という極めて低いものでした。慰謝料は半額程度ですし、逸失利益としては開口障害・そしゃく障害分しか認めておらず、しかも10年間(本来は67歳まで認められるべき)という短い期間しか認めていませんでした。弁護士は、「慰謝料は830万円。逸失利益は外貌醜状分も加え、67歳まで認めるべき。」と主張しました。しかし保険会社は、慰謝料については660万円に増額したものの、逸失利益については全く増額に応じようとしませんでした。しかも過失相殺10%を主張してきました。そこで交通事故紛争処理センターに申立ました。ところが紛争処理センターは、慰謝料については830万円認めたものの、外貌醜状についての逸失利益は認めず、780万円にしか増額しませんでした(開口障害・そしゃく障害についてのみ労働能力喪失率14%で67歳まで・過失相殺5%)。弁護士は、紛争処理センターの和解案に納得できず、紛争処理センターの判決にあたる裁定に移行しました。そして、依頼者が現在の職業(看護師)において、いかに患者の心無い言葉に傷ついているか、私生活においてもどれほど心無い言葉で傷ついているかを陳述書の形で立証しました。また、開口障害・そしゃく障害がいかに職務に支障をきたしているかを立証しました。そして、現在の判例・学説の状況を調べ、「かつての判例は、外貌醜状の逸失利益を認めない傾向にあった。しかし現在では、円満な対人関係の構築・円満な意思疎通の実現・将来の就職等に対する支障を判例は重視しており、逸失利益を認めるか、慰謝料を増額する傾向にある。」ことを主張立証しました。この結果、裁定では、慰謝料830万円の他に外貌醜状の逸失利益も認め、当初の10年間を労働能力喪失率20%とし、逸失利益1000万円(過失相殺5%で総額1800万円)を認めました。依頼者は訴訟を提起することもできましたが、急に結婚が決まり、2ヶ月後には転居することになりました。転居前にすべてを終わらせたいという意向があったことと、結果に満足されたことから、1800万円の裁定を受け入れることにしました。
解決ポイント
保険会社の提示額は、結果的に本来認められるべき金額の半額でした。弁護士を入れたことで倍増できました。保険会社は外貌醜状の逸失利益を認めない傾向にありますが、現在の裁判の流れは、逸失利益か慰謝料を増額する方法で認める傾向にあります。あきらめず弁護士に相談したことで900万円も増額することができました。