解決事例30
依頼者過失2割の事案で、歯牙破折による歯牙障害として後遺障害12級(ただし既存障害13級)・頚部・肩上肢の疼痛違和感による同14級を取得し、人身傷害保険を利用することにより、自己過失分を含めての全損害額480万円を取得した事例
依頼者情報
48歳 女性 豊中市在住
症状名
頚部打撲・顔面擦過傷・歯牙損傷・打撲
事故状況
依頼者がバイクを運転して交差点に青信号で進入したところ、前方走行中の加害車両が急に無合図で左折してきたため、依頼者が加害車両の左側に衝突して転倒・負傷した。
相談に至る経緯
相手方がタクシー会社で保険に入っていなかった。タクシー会社は「依頼者の過失が2割。全損害額の8割しか支払わない。」と主張し、交渉が難航しそうだった。また、後遺障害をとってほしいとの希望が強かったので当方に依頼された。
結果
①12級獲得
弁護士は病院に同行し、頚椎捻挫についての後遺障害診断書を作成してもらいました。後遺症診断書に記載すべきテストや判定機関が重視する情報をお伝えして、的確な後遺障害診断書を作成していただきました。この後遺障害診断書の記載が不十分だと、本来取得すべき等級がとれないことがありますが、十分な診断書を作成していただけたので、無事14級がとれました。
歯牙の後遺障害診断書を作成してもらうために、歯科医院にも同行しました。歯科用の後遺障害診断書は特別なものを使用し、事故前に失っていた歯についても記載する欄があります。歯科医師は書き方を誤解しておられたので、誤解を解き、正しい後遺症診断書を作成してもらいました。その結果、後遺障害12級を獲得することができました。
②人身傷害保険による依頼者過失2割分の回収
依頼者に過失が2割ある場合、相手方から取得できるのは全損害額の8割というのが通常です。
しかし人身傷害保険に加入している場合は、自分の過失分についても回収することが可能です。依頼者はこの人身傷害保険に加入していました。注意しなければならないのは、人身傷害保険の請求を相手方に対する請求より先にしておかなければならないということです。人身傷害保険を先に請求しておかないと、取得できる金額は激減してしまいます。この点については交通事故を専門にやってない弁護士は知らないことがほとんどですので、注意が必要です。
また、人身傷害保険について、保険会社に言われるままに合意してしまうと、相手方に請求するときに、「人身傷害では○○と合意している。」などと主張され、請求額を減額させられることが多いです。人身傷害保険についての請求も弁護士に依頼すべきです。
本件の依頼者からは、人身傷害保険会社に対する請求もご依頼いただきました。
人身傷害保険会社は入通院慰謝料・後遺障害慰謝料については適正な金額の支払に応じましたが、休業損害については適正金額の半分しか認めませんでした。また、逸失利益についても14級で認められる労働能力の喪失期間2~5年の最低である2年しか認めませんでした(総額290万円)。弁護士は人身傷害保険会社の主張が不当であることを主張立証し、320万円に増額させました(全損害の約67%)。
この320万円はまず依頼者過失の2割に充当され、残りが相手方過失分に充当されました。
③相手方との交渉
人身傷害保険会社から取得した金額は全損害の約67%にすぎませんから、残りの約33%については相手方に請求することになります。相手方は当初、休業損害・逸失利益について低い金額を提示してきました(合計130万円)。しかし、依頼者はストレスで髪の毛が抜けるなどの症状が出ていること、相手方の計算方法の誤りを指摘するなどして、約160万円に増額させて合意しました。
④全損害の回収
依頼者には過失が2割ありましたが、その2割については人身傷害保険会社から回収した320万円(全損害の約67%)が充当されました。残りの約33%については相手方から回収できたため、依頼者は最終的に自分が被った全損害480万円を取得できました。
解決ポイント
①当方にご依頼いただけたので、病院同行により必要十分な後遺症診断書を作成してもらえ、後遺症12級を取得できた。歯科医師の誤解を解かなかったら、認定されなかった可能性が高い。
②先に人身傷害保険会社に請求したので、全損害の10割を回収できた。先に相手方に請求していたら全損害の8割しか取得できず、人身傷害保険会社からは1円も取得できなかったはずである。人身傷害保険会社の約款は、「相手方からの取得額が全損害の6~7割以下だった場合にのみ支払われる。」という約款になっているからである。