解決事例41
依頼者過失10%の事例で、左肩打撲傷・棘下筋挫傷等により後遺障害14級を獲得し、約305万円の賠償金を取得した事例
依頼者情報
37歳 豊中市在住
症状名
左肩打撲傷 左腰部打撲傷 左下腿打撲傷 左股関節捻挫
事故状況
バイクで道路を直進中、路外駐車場に進入しようとした対向右折自動車に衝突し、転倒負傷した。
相談に至る経緯
相談者は、事故直後に相談に来られました。その際、弁護士は「事故後6か月治療を続けても痛みが残っている場合や、左肩が回らない状態が続いていれば、後遺障害等級が認定される可能性があります。」と説明しました。その後、相談者は6か月間治療を続け、それでも左肩の痛みが残っており、左腕を上げたり、左肩を回したりすることが困難な状態であったため、当方に依頼されました。
結果
① 14級獲得
弁護士は、依頼者が通院している病院に同行し、依頼者の主治医に後遺障害診断書に記載すべきポイントや判定機関が重視する情報を伝えたうえで、後遺障害診断書を作成してもらいました。また、後遺障害等級認定の申請をする際、依頼者から聞き取った自覚症状を詳しく記載した書面を添付して申請しました。
その結果、左肩の神経症状を理由に後遺障害14級が認定されました。
ただし、後遺障害診断書には「MRI画像上腱板損傷が認められる。」と明記されていたにもかかわらず、腱板損傷は認定されませんでした。
そのため、後遺障害等級14級の判定に対して異議申立てをすれば、腱板損傷が認められ、後遺障害12級や10級が認定される可能性がありました。
後遺障害12級や10級が認定されれば、逸失利益や後遺障害慰謝料の額が大幅に増額します。
弁護士はそのことを依頼者に説明しましたが、依頼者は異議申立てまではしないという意向でしたので、異議申立ては断念しました。
② 自賠責保険からの回収
後遺障害慰謝料の一部として、相手方が加入している自賠責保険から75万円を回収しました。
③ 相手方との交渉
弁護士は、依頼者が被った損害のうち、自賠責保険からの回収分と相手方の既払額を差し引いた額を請求しました。
具体的には、入院雑費4500円・逸失利益約138万円(事故前年の年収の5%・30年分)、入通院慰謝料約128万円、後遺障害慰謝料110万円から依頼者過失10%分を引いた上で、自賠責保険から回収した75万円及び相手方の既払額を引いた約252万円を請求しました。
逸失利益は原則として事故前年の年収を基礎に算定されます。
そのため、弁護士は当初、依頼者の事故前年の年収で算定した逸失利益を請求しました。
もっとも、依頼者の場合、事故前年の年収よりも事故当年の年収の方が高額でした。また、弁護士が交渉開始直後に相手方の様子を窺ったところ、相手方も事故当年の年収で逸失利益を算定することに応じる可能性がありました。
そのため、弁護士は、依頼者にとって有利な事故当年の年収で逸失利益を算定することを前提に相手方と交渉し、これを相手方に認めさせました。
また、交渉の結果、相手方に入院雑費・入通院慰謝料・後遺障害慰謝料について、弁護士の主張どおりの金額を認めさせました。
しかし、相手方は、逸失利益について、依頼者の年収の5%・3年分で算定した約31万円(全賠償額約150万円)しか認めませんでした。
後遺障害14級が認定された場合、原則として、年収の5%を67歳までの期間(労働能力喪失期間)分請求できます。
ただし、むち打ち等による神経症状が原因の場合は、将来症状が回復する可能性があるため、2年~5年分と請求できる年数が短くなります。
依頼者の場合も、後遺障害等級の判定機関から「腱板損傷は認められない。」と認定されていましたので、裁判になった場合、むち打ち等と同じように、労働能力喪失期間が2年~5年に限定される可能性がありました。
弁護士は、少しでも労働能力喪失期間を長く認めさせるため、「本来12級や10級が認定されてもおかしくない事案である。依頼者は現在も左肩に強い痛みが残っており、将来神経症状が回復する可能性は低い。」と主張し、相手方と交渉を続けました。
その結果、年収の5%・15年分で算定した約120万円を相手方に逸失利益として認めさせました。
依頼者もこの内容に納得されたので、最終的に総額約230万円(自賠責からの回収分と合わせて約305万円)で合意しました。
解決ポイント
① 医者が作成する後遺障害診断書には記載が不十分なものもあり、そのために本来認定されたはずの後遺障害が認定されないことがあります。
本件は、弁護士の病院同行により的確な後遺障害診断書を作成してもらうことができましたので、腱板損傷は認められなかったものの、後遺障害14級を獲得できました。
また、異議申立てをすれば、腱板損傷が認められ、後遺障害12級や10級が認定される可能性もありました。
② 弁護士が介入していない事案では、保険会社は裁判基準の半額以下しか損害として認めないことが多いです。
本件では、保険会社が示談案を提示する前に弁護士が入って交渉しましたので、当初から裁判基準を前提とした交渉ができ、保険会社も逸失利益以外の損害については、裁判基準で算定した額をすぐに認めました。逸失利益についても、最終的には当初の相手方の提示額の約4倍に増額できました。