死亡事故特有の問題
1 弁護士に依頼すべき必要性の高さ
死亡事故の場合、遺族が請求できる賠償金は高額になります。①死亡慰謝料は2000~2800万円となり、②死亡逸失利益(67歳まで生きていたら得ていたであろう収入)も、年齢・年収によりますが1000万円~数1000万円になります(30歳主婦の場合、約4200万円)。
このように死亡事故の賠償金は数1000万円になりますが、遺族に弁護士が就いていない場合、保険会社は適正な賠償金の半額以下を呈示することが多いです。一般の方には賠償金についての正確な知識・裁判をする能力がありませんから、半額以下の呈示額がさも適正な金額であるかの様に保険会社は遺族に説明して合意させようとします。
しかし、遺族に弁護士が就くと、弁護士は適正な金額を豊富な知識で算定し、訴訟を辞さずに請求しますので、保険会社は適正な賠償金を支払ってきます。その結果、弁護士が就くか就かないかによって、1000万円単位で受け取る賠償金が変わってきます。
したがって、死亡事故においては必ず弁護士を選任すべきです。
2 弁護士を選任する時期
弁護士を選任する場合には、保険会社が賠償金額を呈示する前、交渉の当初から選任することが望ましいです。
保険会社の担当者は、一般に2000万円までの決済権限しか持っていません。そのため、死亡事故のように賠償金が2000万円を超える場合には、遺族に賠償金額案を呈示する前に、担当者は責任者に稟議を上げ、責任者の決済(了承)を得る必要があります。1度責任者の決済(了承)が下りた賠償金額案を弁護士が就いたことを理由に倍増させるには、再度責任者の決済(了承)が必要となります。担当者は、責任者が納得するだけの理由と資料を出して責任者の決済(了承)を取らなければならず、そのためには多大な労力と時間が必要となります。簡単には増額に応じてくれません。責任者が「裁判で判決が出ない限り増額を認めない。」と判断すると、示談交渉だけでは解決できず、訴訟を提起して判決を取ることが必要となります。裁判は早くて1年、事案によっては2~3年かかりますから、解決が大幅に遅れてしまいます。
また、遺族が交渉して保険会社と険悪な関係になってしまうと、弁護士が選任された後も示談交渉では簡単には増額を認めてくれないことが多いです。
もちろん、裁判によれば適正な金額を得ることは可能ですが、早く解決しないと、一家の大黒柱を失った遺族の中には生活が困窮する方も出てきます。
弁護士を選任しなければ数1000万円の賠償金を失うことになりますから、いずれ弁護士を選任しなければなりません。そうであれば、当初から弁護士を選任したほうが早く解決できますし、保険担当者と交渉する遺族の負担も減少します。
3 相続問題の発生
交通事故で死亡された場合、亡くなった方(被相続人)の相続人が、被相続人の慰謝料・逸失利益等のみならず不動産・預貯金等も相続します。
したがって、死亡事故の場合、保険会社との関係のみならず、相続人間でもトラブルが発生することがあります。
弁護士であれば、相続問題も同時に解決することが可能です。
4 同意書取付問題
保険会社の中には、交渉を一度で終わらせるため、「全相続人・近親者の同意書を取り付けて窓口を一本化しないと支払わない。」などと言ってくる会社があります。
相続人でない近親者(例えば、夫が死亡し配偶者も子どももいる場合、夫の母は、相続人ではないが近親者。)にも慰謝料が発生することがあるので、保険会社は一度に全て解決したいのです。
しかし、事情があって相続人・近親者と折り合いが悪く、同意書が取れない場合があります。そのような場合、法律の専門家である弁護士が「同意書を取り付ける法的義務などない。訴訟を提起する。」と言わないと、事態が進展しません。
当事務所でも、このような理不尽な保険会社の要求を拒否して、賠償金を支払わせたことがあります。
5 まとめ
このように、死亡事故の場合、弁護士を選任する必要性が極めて高いです。
交通事故の専門知識のある弁護士に必ずご相談ください。